うつ病で休職し、一度復職した後に再び体調を崩してしまった場合、「また傷病手当金を受け取れるのだろうか」と不安になる方は少なくありません。結論から申し上げますと、条件を満たせば2回目の傷病手当金も受給できる可能性があります。ただし、1回目の受給状況や復職期間などにより受給の可否や期間が異なるため、制度の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、うつ病の再発時に傷病手当金を2回目も受給するための条件、不支給となるケース、申請手続きの流れまで、厚生労働省の公式情報に基づいて詳しく解説します。専門用語もできるだけ分かりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事内の各種受給例はあくまでも一例であり、実際は個人の状況により異なる可能性がございます。正確な金額はハローワークでご確認ください。
うつ病で傷病手当金を2回目も受給できる条件とは?
うつ病などの同じ病気で2回目の傷病手当金を受給できるかどうかは、主に「1回目の受給からどれくらいの期間が経過しているか」と「社会的治癒が認められるか」という2つのポイントによって決まります。
また、令和4年に施行された制度改正により、復職期間の扱いが大きく変わりましたので、まずはこれらの基本的なルールを理解しておきましょう。
1年6ヶ月以内の同一傷病の再発なら待期期間なしで受給可能
傷病手当金は、同一の病気やケガに対して支給開始日から通算1年6ヶ月まで受給できる制度です。そのため、1回目の受給開始から通算で1年6ヶ月以内であれば、復職後に再び体調を崩した場合でも、残りの期間分について2回目の傷病手当金を受給できます。
この場合、待期期間(連続して3日間仕事を休む期間)を改めて設ける必要はなく、すぐに申請手続きを進められる点がメリットです。例えば、1回目の受給で合計6ヶ月間給付を受けた方であれば、残り1年分について2回目の受給が可能となります。ただし、通算で1年6ヶ月を超えての受給はできませんので、受給済みの期間を事前に確認しておくことが重要です。
1年6ヶ月経過後の再発は「社会的治癒」の有無が重要
一方で、すでに1年6ヶ月分の傷病手当金を受給し終えた後に再び同じ病気で体調を崩した場合は、原則として2回目の傷病手当金を受給することはできません。しかし、一定の条件を満たして「社会的治癒」が認められた場合は、再発ではなく新たな病気として扱われ、改めて通算1年6ヶ月分の傷病手当金を受給できる可能性があります。
社会的治癒とは、医学的に完全に治っていなくても、一定期間にわたって通常勤務を続けられるなど、社会生活を問題なく送れていた状態を指します。この判断は医師ではなく健康保険組合が行うため、社会的治癒が認められるかどうかは個別のケースによって異なります。次のセクションで詳しく解説しますので、該当する可能性がある方はぜひご確認ください。
令和4年改正で通算制度が導入|復職期間はカウントされない
令和4年1月1日に施行された健康保険法の改正により、傷病手当金の支給期間が「支給開始日から起算して1年6ヶ月」から「通算して1年6ヶ月」に変更されました。この改正により、復職して傷病手当金が支給されない期間があっても、その期間は1年6ヶ月にカウントされなくなったため、治療と仕事の両立がしやすくなりました。
具体的には、例えば3ヶ月間傷病手当金を受給した後に復職し、その後再び3ヶ月間受給した場合、従来の制度では支給開始日から1年6ヶ月を経過すると受給できなくなっていましたが、改正後は通算6ヶ月分のみがカウントされ、残り1年分について引き続き受給できるようになりました。この改正は、令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金が対象となっています。
社会的治癒とは?2回目受給の判断基準を知ろう
社会的治癒は、1年6ヶ月を超えて傷病手当金を受給済みの方が2回目の受給を目指す際に、最も重要なポイントとなる概念です。
しかし、この社会的治癒には明確な数値基準がなく、健康保険組合による個別判断となるため、事前に判断基準の目安を理解しておくことが大切です。
社会的治癒の定義|医学的完治でなくても認められる可能性
社会的治癒とは、医学的には完治していない状態であっても、病気の影響を受けずに社会生活を問題なく送れていた期間があると認められる状態のことです。厚生労働省の通達では、「相当の期間にわたって医療(予防的医療を除く)を行う必要がなくなり、通常の勤務に服していたことが認められる場合」とされています。
つまり、通院や服薬を続けながら働いていた場合や、体調に波がありながらも何とか勤務を続けていた場合には、社会的治癒とは認められにくい傾向があります。一方で、医師の診断により症状が軽快し、通院や服薬がない状態で通常勤務を続けられていた期間があれば、社会的治癒と認められる可能性が高まります。
判断基準は健康保険組合により異なる
社会的治癒の判断は、医師ではなく健康保険組合(協会けんぽや企業の健康保険組合など)が行います。そのため、同じような状況でも保険者によって判断が異なる場合があり、明確な統一基準は存在しません。
実際の審査では、復職後の勤務状況、通院・服薬の有無、健康診断の結果、上司や同僚からの評価なども含めて総合的に判断されます。そのため、2回目の受給を検討している方は、まず加入している健康保険組合に相談し、どのような条件であれば社会的治癒が認められる可能性があるかを確認することをおすすめします。
一般的に2年程度の通常勤務が目安とされることが多い
社会的治癒の判断には明確な基準がないとお伝えしましたが、実務上は「通院・服薬なしで2年程度の通常勤務を継続できていたこと」が一つの目安とされることが多いようです。ただし、この2年という期間も絶対的なものではなく、病気の種類や業務内容、勤務状況などによって変わります。
例えば、うつ病のように症状の波が大きい病気の場合、数ヶ月単位で症状が変動することもあるため、3ヶ月程度の復職期間だけでは社会的治癒と認められにくい傾向があります。一方で、明らかに症状が軽快し、健康な状態で数年間勤務を続けられていた場合には、社会的治癒が認められやすくなります。いずれにしても、加入している健康保険組合に個別に相談し、判断を仰ぐことが最も確実な方法です。
2回目の傷病手当金が不支給になる主なケース
2回目の傷病手当金を申請しても、条件を満たしていない場合には不支給となることがあります。
ここでは、実際に不支給となる主なケースを4つご紹介しますので、申請前にご自身の状況と照らし合わせてご確認ください。
すでに1年6ヶ月受給済みで社会的治癒が認められない場合
最も多い不支給のケースは、すでに通算1年6ヶ月分の傷病手当金を受給し終えており、かつ社会的治癒が認められない場合です。この場合、同一の病気が継続しているとみなされるため、2回目の受給はできません。
例えば、うつ病で1年6ヶ月間傷病手当金を受給した後、3ヶ月間だけ復職し、その後再び休職した場合、復職期間が短く社会的治癒と認められなければ、2回目の傷病手当金は支給されないことになります。復職期間中も通院や服薬を続けていた場合や、勤務に支障が出ていた場合には、より一層社会的治癒と認められにくくなります。
復職中も通院・服薬が必要で、就労不能と判断されにくい場合
復職期間中に継続的な通院や服薬が必要だった場合、社会的治癒が認められにくくなります。なぜなら、社会的治癒の判断基準には「相当の期間にわたって医療を行う必要がなくなり」という条件が含まれているためです。
具体的には、復職後も定期的に心療内科に通院し、抗うつ薬や睡眠薬を服用し続けていた場合や、勤務に支障が出ないよう医学的管理が必要だった場合には、病気が継続していると判断される可能性が高くなります。そのため、復職期間中の治療状況は、2回目の受給可否に大きく影響する要素となります。
医師の診断書に労務不能期間の記載が不十分な場合
傷病手当金の申請には医師の診断書が必要ですが、その診断書に労務不能期間の記載が不十分だったり、症状の詳細が明記されていなかったりする場合にも、不支給となることがあります。
特に2回目の申請では、1回目との症状の変化や、復職後の状態、再び休職が必要になった理由などが具体的に記載されていることが重要です。診断書を依頼する際は、主治医に対して「2回目の傷病手当金申請のため、症状の詳細や労務不能の理由を具体的に記載してほしい」と伝えることをおすすめします。
病名が異なっても原因が同じと判断された場合
病名が異なる場合でも、原因が同じと判断されれば同一の病気として扱われ、2回目ではなく1回目の続きとみなされます。例えば、1回目が「うつ病」で2回目が「適応障害」という病名であっても、両者に相当因果関係が認められる場合には、同一関連傷病として扱われます。
厚生労働省の通達でも、「医師の附した病名が異なる場合でも疾病そのものが同一なること明らかなときは同一の疾病に該当する」とされています。そのため、病名が変わったからといって必ずしも新たな病気として認められるわけではなく、健康保険組合が医学的因果関係を総合的に判断することになります。
傷病手当金の申請手続きと必要書類
2回目の傷病手当金を受給するには、1回目と同様に所定の申請手続きが必要です。
ここでは、申請書の入手方法から提出までの流れを、実務的なポイントとともにご紹介します。
傷病手当金支給申請書の入手方法と記入の流れ
傷病手当金の申請には、「健康保険傷病手当金支給申請書」という専用の用紙を使用します。この申請書は、協会けんぽの場合は協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできるほか、勤務先の人事・総務部門や加入している健康保険組合から入手できます。
申請書は全部で4ページ構成となっており、1〜2ページ目は申請者本人が記入する欄、3ページ目は事業主(会社)が記入する欄、4ページ目は療養担当者(医師)が記入する欄となっています。2回目の申請であっても記入内容は基本的に同じですが、1回目の受給時期や期間について正確に記載することが求められる場合があります。申請書には休業した期間を記載する必要があるため、出勤簿やカレンダーを見ながら正確に記入しましょう。
医師と会社への記入依頼で注意すべきポイント
申請書の医師記入欄は、主治医に記入を依頼する必要があります。この際、診察時に申請書を持参し、「○月○日から○月○日まで労務不能であったこと」を証明してもらいます。2回目の申請では、1回目との症状の違いや、復職後に再び休職が必要になった経緯を医師に詳しく説明しておくと、より適切な診断書を書いてもらえる可能性が高まります。
また、事業主記入欄については、会社の人事・総務部門に記入を依頼します。この欄には、休業期間中の給与支払いの有無や出勤状況が記載されます。会社によっては記入に数日から1週間程度かかる場合もありますので、余裕を持って依頼することをおすすめします。なお、すでに退職している場合でも、在職中の休業期間について傷病手当金を申請することは可能ですが、退職後は事業主記入欄を入手しにくくなるため、退職前に手続きを進めておくと安心です。
審査期間は一般的に2週間~1ヶ月|2回目は短くなることが多い
申請書がすべて揃ったら、加入している健康保険組合に提出します。協会けんぽの場合は、都道府県ごとの協会けんぽ支部に郵送で提出するのが一般的です。提出後、健康保険組合による審査が行われ、支給の可否が決定されます。
審査期間は一般的に2週間から1ヶ月程度とされていますが、申請内容に不備がある場合や追加の確認が必要な場合には、さらに時間がかかることもあります。ただし、2回目の申請の場合は、すでに1回目の受給実績があるため審査がスムーズに進み、1回目よりも早く振り込まれる傾向があります。審査が完了し支給が決定すると、指定した口座に傷病手当金が振り込まれます。
受給できる金額はいくら?計算方法と具体例
傷病手当金の受給額は、これまでの給与をもとに計算されます。
ここでは、具体的な計算方法とシミュレーション例をご紹介しますので、ご自身の状況に当てはめて目安を確認してみてください。
標準報酬月額の約3分の2が支給額の目安となる
傷病手当金の1日あたりの支給額は、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」という計算式で算出されます。標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料を計算する際に使われる、給与を一定の等級に区分した金額のことです。
この計算式により、おおむね給与の3分の2に相当する金額が1日あたりの傷病手当金として支給されます。ただし、被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、以下のいずれか低い額が算定の基礎となります。
①被保険者期間における標準報酬月額の平均額
②標準報酬月額の平均値(協会けんぽの場合:支給開始日が令和7年3月31日以前の方は30万円、令和7年4月1日以降の方は32万円)
ただし、健康保険組合によって基準額が異なる場合がありますので、詳細は加入している保険者にご確認ください。
計算式と具体的なシミュレーション例
それでは、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。
標準報酬月額26万円の場合
- 26万円÷30日=8,670円(10円未満四捨五入)
- 8,670円×2/3=5,780円(1円未満四捨五入)
- 1ヶ月間(30日間)休業した場合の支給総額:5,780円×30日=約173,400円
標準報酬月額30万円の場合
- 30万円÷30日=10,000円(標準報酬日額)
- 10,000円×2/3=6,666.66…→約6,667円(1円未満四捨五入)
- 1ヶ月(30日間)休業した場合の支給総額:6,667円×30日=約200,010円
ただし、これはあくまで一般的なケースでの計算例です。実際の支給額は個人の標準報酬月額や休業日数により異なりますので、正確な金額を知りたい方は、加入している健康保険組合に問い合わせるか、協会けんぽのウェブサイトにある計算ツールを利用することをおすすめします。
失業保険 総額シミュレーター
正確な金額・給付日数とは異なる場合があります。
| 雇用保険の加入期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合退職・特定理由離職者の場合
| 雇用保険の加入期間 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 29歳以下 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30~34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35~44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45~59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60~64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
よくある質問|うつ病と傷病手当金の2回目受給について

ここでは、うつ病による傷病手当金の2回目受給に関してよくいただく質問にお答えします。同じような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
傷病手当金のリセット期間はどのくらいですか?
傷病手当金には、明確な「リセット期間」という制度は存在しません。ただし、前述の「社会的治癒」が認められれば、実質的にリセットされたとみなされ、新たに通算1年6ヶ月分の傷病手当金を受給できる可能性があります。
社会的治癒の判断基準には明確な期間の定めはありませんが、実務上は通院・服薬なしで2年程度の通常勤務を継続できていたことが一つの目安とされることが多いようです。ただし、最終的な判断は健康保険組合が行うため、加入している保険者に個別に確認することをおすすめします。
うつ病で2回目の休職期間はどれくらいが一般的ですか?
うつ病による休職期間は個人差が大きく、一概に「一般的な期間」を示すことは困難です。症状の程度、治療方法、職場環境、本人の回復力などにより、数ヶ月で復職できる方もいれば、1年以上の休職が必要になる方もいます。
また、2回目の休職は1回目よりも長期化する傾向があるという指摘もあります。これは、再発により症状が重くなる場合があることや、復職に対する不安が強まることなどが理由として考えられます。いずれにしても、主治医と相談しながら、無理のない復職計画を立てることが大切です。
同じ病気で2回休業しても傷病手当金は支給されますか?
はい、条件を満たせば支給されます。支給開始日から通算1年6ヶ月以内であれば、復職後に再び同じ病気で休業した場合でも、残りの期間分について傷病手当金を受給できます。待期期間も不要です。
一方、すでに通算1年6ヶ月分を受給し終えている場合は、社会的治癒が認められない限り、2回目の支給は受けられません。社会的治癒の判断は健康保険組合が行いますので、該当する可能性がある方は、まず加入している保険者に相談してみることをおすすめします。
適応障害から症状が再燃した場合も同じ病気として扱われますか?
適応障害とうつ病は、医学的には異なる病名ですが、両者に相当因果関係が認められる場合には、同一関連傷病として扱われる可能性があります。厚生労働省の通達でも、「医師の附した病名が異なる場合でも疾病そのものが同一なること明らかなときは同一の疾病に該当する」とされています。
そのため、1回目が適応障害で2回目がうつ病という場合でも、健康保険組合が両者の因果関係を認めれば、同一の病気の継続として扱われ、1回目の受給期間と通算して1年6ヶ月が上限となります。逆に、明らかに原因が異なる別の病気であると認められれば、新たな病気として扱われ、改めて1年6ヶ月分の受給が可能となります。
2回目の申請が会社にバレることはありますか?
傷病手当金の申請には、事業主(会社)が記入する欄があるため、会社の人事・総務部門には申請の事実が知られることになります。ただし、健康保険組合には守秘義務があり、本人の同意なく病名や症状の詳細を会社に開示することはありません。
事業主記入欄には、休業期間中の給与支払いの有無や出勤状況などの事務的な情報のみが記載され、病名や症状の詳細までは記載されません。また、すでに退職している場合は、在職中の休業期間について申請する形となるため、退職後の会社には情報が伝わりません。プライバシーが心配な方は、人事・総務部門に対して「病名などの個人情報は必要最小限にしてほしい」と伝えることも一つの方法です。
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退職前にご相談いただくことで、利用可能な制度について事前に情報収集していただけます。まずはお気軽に、あなたの状況で活用できる制度があるかどうかを確認してみませんか。
※実際の手続きはご本人様がハローワークで行っていただく必要があります。受給の可否及び金額は、ハローワークでの審査により決定されます。




