【例文あり】精神的苦痛での退職届の書き方|パワハラ・体調不良別に解説

【例文あり】精神的苦痛で退職するときの退職届の書き方│パワハラ・体調不良でも失敗しない方法

精神的な苦痛を理由に退職を決断することは、決して珍しいことではありません。パワハラや長時間労働、人間関係のストレスなど、職場環境が原因で心身に不調をきたしている方は少なくないのが現実です。

しかし、いざ退職届を書こうとすると、「精神的苦痛と正直に書いていいのか」「一身上の都合と書いたら損をするのでは」と迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、精神的苦痛での退職届の書き方を、パワハラ・体調不良など状況別の例文4パターンとあわせて解説します。あわせて、失業保険への影響や、退職前にしか準備できない手続きについてもお伝えします。

この記事でわかること
  • 退職届に「精神的苦痛」と書く必要はない理由
  • パワハラ・体調不良など、状況別の退職届の例文4パターン
  • 「一身上の都合」と書きたくないときの選択肢
  • 心身の不調で辞める人が該当しうる「特定理由離職者」とは
  • 退職前にしか準備できない傷病手当金の手続き
目次

精神的苦痛を理由に退職するとき、退職届はどう書けばいい?

精神的な苦痛を理由に退職する際、退職届に何をどう書くかで迷う方は多いのではないでしょうか。

「正直に書いたほうが失業保険で有利になるのでは」と考える方もいますが、離職理由を判断するのはハローワークであり、退職届の文言だけで決まるわけではありません。とはいえ、書いた内容が判断材料のひとつになることも事実です。

ここでは、退職届に何をどう書くべきかを順に説明していきます。

退職届に「精神的苦痛」と書く必要はない

結論から言うと、退職届に「精神的苦痛」という言葉を書く必要はありません。

退職届は、退職の意思と退職日を会社に伝えるための書類です。理由を詳しく書かなければならないという法律上の決まりはなく、「一身上の都合により」の一文でも書類としては成立します。

そのうえで、押さえておきたいポイントは次の3つです。

ポイント内容
①理由を詳しく書く義務はない退職届に退職理由の詳細を記載する法的な義務はない
②離職理由を決めるのはハローワーク自己都合か会社都合かは、退職届の文言ではなくハローワークが個別に判断する
③ただし退職届は判断材料になる「一身上の都合」と書いた場合、それを自分で認めた記録として扱われることがある

つまり、感情的な表現で詳しく書く必要はない一方、実態がパワハラや過重労働であるなら「一身上の都合」と書いてしまうことにも注意が必要です。

自分の状況がどちらに近いのかを確認したうえで、書き方を決めていきましょう。

退職届に「精神的苦痛」とそのまま書くべきか

結論から言えば、退職届に「精神的苦痛」という言葉をそのまま書くことは、一般的には推奨されません。なぜなら、感情的な表現は退職手続きを円滑に進める妨げになる可能性があり、また具体的な状況説明がないと会社都合として認められないケースが多いからです。

ただし、パワハラやセクハラなど明確な原因がある場合は、「○○による業務環境の悪化により」といった客観的な表現で事実を簡潔に記載する方法があります。このとき、メールの記録や録音データ、医師の診断書など、証拠となる資料を別途保管しておくことが重要です。つまり、退職届には冷静かつ事実に基づいた表現を用い、詳細な証拠は別途整理しておくという姿勢が円満退職への近道と言えるでしょう。

「一身上の都合」と書きたくないときはどうする?

「一身上の都合と書きたくない」と感じている方もいるのではないでしょうか。実態はパワハラや過重労働なのに、自分の都合で辞めたことにされてしまう。そう感じるのは自然なことです。

まず、「一身上の都合」と書かなければならない決まりはありません。退職届に理由を書く義務そのものがないため、「◯月◯日をもって退職いたします」だけでも書類としては成立します。

ただし、実態がパワハラや過重労働に該当する場合は注意が必要です。「一身上の都合」と書くと離職票でも自己都合として処理される可能性が高く、あとから異議申し立てをするには客観的な証拠が必要になります。

書きたくないと感じている場合の選択肢は、次の3つです。

選択肢書き方向いている状況
①理由を書かない「◯月◯日をもって退職いたします」のみ会社と揉めたくないが、自己都合と自分で書きたくない場合
②事実を簡潔に書く「ハラスメント行為により勤務の継続が困難なため」など証拠があり、会社都合として主張したい場合
③体調に触れる「体調不良により療養が必要なため」など心身の不調で退職し、診断書がある場合

自己都合退職の場合、失業保険には給付制限期間があります。2025年4月1日以降の離職では1ヶ月に短縮されましたが、待期期間(7日間)と合わせると、離職後すぐには受給できません。

どの書き方が自分に合っているか判断が難しい場合は、退職届を提出する前に、ハローワークの窓口や社会保険労務士に相談しましょう。

会社都合として認められるケースとは

会社都合退職として認められるケースには、法律や厚生労働省の基準に基づいた条件があります。パワハラやセクハラなどのハラスメント、賃金の大幅な減額や未払い、退職勧奨などが該当します。

長時間労働については、離職前6ヶ月のうち以下のいずれかに当てはまる場合が基準です。

  • 連続する3ヶ月で月45時間を超えた
  • 1ヶ月で100時間を超えた
  • 2〜6ヶ月の平均で月80時間を超えた

参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省 

会社都合と認められるかどうかは、ハローワークが客観的な証拠に基づいて判断します。メールやチャットの履歴、タイムカードのコピー、医師の診断書、同僚の証言などが証拠になります。

なお、録音はプライバシー保護との関係で慎重な判断が必要な場合があります。収集方法や有効性に迷ったら、労働基準監督署や弁護士にご相談ください。

原因が会社側にあると考えられる場合は、日頃から事実関係を記録しておきましょう。

「自分の場合はどう書けばいい?」と迷った方へ

退職リトリートでは、社会保険労務士の監修のもと、退職前後の手続きと受け取れる可能性のある給付金についてご案内します。

※申請手続きはご本人がハローワーク・健康保険組合で行っていただきます。
※支給の可否と金額は、各機関の審査により決定されます。

退職届と退職願の違い|精神的に限界な場合はどちらを出す?

退職届と退職願は、似た名称ですが法的効力や撤回の可否が大きく異なります。精神的に限界を迎えている状況では、どちらを提出すべきか正しく理解しておくことで、無用なトラブルを避けることができます。

ここでは、両者の違いを法的根拠とともに解説し、あなたの状況に合った選択ができるよう説明していきます。

退職届は原則として撤回できない

退職届は、「○月○日をもって退職します」という確定的な意思表示を会社に対して行う書類です。民法第627条では、期間の定めのない労働契約の場合、退職の申し入れから2週間を経過すれば雇用契約が終了すると規定されています。

そのため、退職届を提出した時点で法的効力が発生し、原則として撤回することは困難です。会社側の承諾がなくても、退職届の提出から2週間後には労働契約が終了するという強い効力を持っているため、提出前には退職の意思が固まっていることを確認する必要があります。つまり、退職届は「もう後戻りできない」という覚悟を持って提出する書類だと理解してください。

ただし、書面のタイトルが「退職届」であっても、記載内容が会社の承諾を求める形になっている場合は、承諾前であれば撤回できることもあります。

退職願は承諾前なら撤回が可能

一方、退職願は「退職させていただきたい」という希望を会社に伝える書類であり、会社側の承諾を得て初めて退職が成立します。そのため、会社が承諾する前であれば撤回が可能であり、退職届ほどの強い法的効力は持ちません。

退職願は口頭での申し出でも代替可能とされていますが、トラブル防止の観点から書面で提出することが推奨されます。また、退職願を提出した後、会社から正式に承諾を得るまでの間に気持ちが変わった場合は、速やかに撤回の意思を伝えることで退職を取りやめることができます。

このように、退職願は退職届と比べて柔軟性があるため、退職の決意が完全に固まっていない段階では退職願を選択するという方法もあります。

精神的苦痛で辞める場合に退職届が適切とされる理由

精神的に限界を迎えている状況では、多くの場合、退職届を提出することが適切とされています。なぜなら、精神的苦痛が深刻な状態では一刻も早く職場から離れることが優先されるため、会社の承諾を待つ必要がない退職届の方が確実だからです。

また、パワハラや過重労働などが原因の場合、会社側が退職を引き止めたり、話し合いを長引かせたりする可能性も考えられます。そのような状況を避け、毅然とした態度で退職の意思を示すためにも、撤回できない退職届を選択することで、あなた自身の意思を明確に伝えることができます。

ただし、退職届の提出後は原則として撤回できないため、提出前には信頼できる家族や友人、専門家に相談するなど、慎重に判断することをお勧めします。

【状況別】退職届の書き方と例文4パターン

退職届の書き方は、あなたの退職理由や状況によって適切な表現が異なります。ここでは、そのまま使える例文を4パターン紹介し、それぞれの書き方のポイントを解説します。

なお、どのパターンでも共通するのは、日付・宛名・所属・氏名を正確に書くことです。理由の書き方に迷っても、この4点が揃っていれば書類として問題ありません。自分の状況に合った書き方を参考にしてください。

パターン1:一身上の都合として退職する場合の書き方

精神的な負担はあるものの、会社都合として主張しない場合や、円満退職を優先したい場合は、「一身上の都合」という定型表現を使用します。これは日本の退職届における最も一般的な書き方です。

パターン1の退職届例文

退職届

このたび、一身上の都合により、令和◯年◯月◯日をもって退職いたします。

令和◯年◯月◯日

◯◯部◯◯課 氏名 ㊞

株式会社◯◯◯◯

代表取締役 ◯◯ ◯◯ 殿

このパターンは、詳細な理由を伝えずに退職したい場合や、転職先が決まっており早期に手続きを進めたい場合に適しています。ただし、この書き方では自己都合退職として扱われるため、失業保険の給付開始時期が遅くなる点には注意が必要です。

パターン2:パワハラが原因で退職する場合の書き方

パワハラやセクハラなど、明確なハラスメントが原因で退職する場合は、会社都合退職として認められるよう、事実を簡潔に記載する方法があります。ただし、具体的な証拠を別途用意しておくことが前提となります。

パターン2の退職届例文

退職届

このたび、職場におけるハラスメント行為により勤務の継続が困難となったため、令和◯年◯月◯日をもって退職いたします。

令和◯年◯月◯日

◯◯部◯◯課 氏名 ㊞

株式会社◯◯◯◯

代表取締役 ◯◯ ◯◯ 殿

この書き方では、「ハラスメント行為」という客観的な表現を使用し、感情的な言葉は避けています。会社都合退職として認められれば、失業保険の給付制限期間がなく、給付日数も自己都合より多くなる可能性があります。

ただし、ハラスメントの事実が認められず、心身の不調による退職として特定理由離職者になる場合は、給付制限がなくなる一方で給付日数は自己都合と同じです。

パターン3:体調不良・病気療養で退職する場合の書き方

体調不良や病気療養が理由で退職する場合、医師の診断を受けているなら、その事実を退職届に記載する方法があります。退職理由の正当性を示せるため、引き止めを受けにくくなります。

パターン3の退職届例文

退職届

このたび、医師の診断により療養が必要となったため、令和◯年◯月◯日をもって退職いたします。

令和◯年◯月◯日

◯◯部◯◯課 氏名 ㊞

株式会社◯◯◯◯

代表取締役 ◯◯ ◯◯ 殿

このパターンでは、具体的な病名を記載する必要はありません。「医師の診断により」という表現で十分であり、プライバシーを保護しつつ正当な退職理由を示すことができます。診断書は退職届と一緒に提出するか、会社から求められた場合に提示できるよう準備しておきましょう。

パターン4:即日退職が必要な場合の書き方

精神的に限界を迎えており、一刻も早く退職したい場合でも、法律上は退職の申し入れから2週間で契約が終了するのが原則です(民法第627条)。

ただし、会社が同意すれば、それより早く退職できます。また、契約期間の定めがある方(契約社員・パートなど)は、民法第628条の「やむを得ない事由」があれば、期間の途中でも直ちに契約を解除できます。心身の不調が深刻な場合は、この事由に該当する可能性があります。

いずれの場合も、医師の診断書など客観的な証拠を用意しておきましょう。

参考:民法|e-Gov法令検索

パターン4の退職届例文

退職届

このたび、心身の健康状態が著しく悪化し、医師から即座の療養が必要と診断されたため、本日をもって退職いたします。

令和◯年◯月◯日

◯◯部◯◯課 氏名 ㊞

株式会社◯◯◯◯

代表取締役 ◯◯ ◯◯ 殿

即日退職は例外的な対応のため、診断書の提出とともに、後日のトラブル防止の観点から、内容証明郵便などで退職届を送付する方法も検討してください。また、会社が退職届の受理を拒否する場合でも、適切な手続きを経れば退職は有効となります。

適応障害・うつ病と診断されている場合の書き方 

適応障害やうつ病と診断されている場合でも、退職届に病名を書く必要はありません。書き方はパターン3と同じで、「体調不良により療養が必要なため」で十分です。

理由は2つあります。退職届は書類として長期間保管されるため、必要以上に医療情報を会社に残すことになる点。もう1つは、ハローワークが離職理由を判断する際に必要なのは診断書であり、退職届の文言ではない点です。

事情を伝えたい場合は、口頭で補足するか診断書を提示すれば十分です。診断書は失業保険や傷病手当金の手続きでも使うため、在職中に取得しておきましょう。

「自分の状況ではどの書き方が合っている?」と迷った方へ

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退職届を提出する前に確認しておきたい重要ポイント

退職届を提出する前に、失業保険の給付条件や証拠の準備、提出方法などを確認しておくことで、退職後の生活をより安定させることができます。ここでは、退職届を出す前に必ず押さえておきたい重要なポイントを解説します。

自己都合と会社都合では失業保険の給付条件が大きく異なる

失業保険の給付条件は、退職理由が自己都合か会社都合かによって異なります。2025年4月1日以降に離職した場合、自己都合退職の給付制限期間は1ヶ月となりました(2025年3月31日までは原則2ヶ月、2020年10月の改正以前は3ヶ月の給付制限期間が設けられていましたが、段階的に短縮されてきた経緯があります)。

具体的には、自己都合退職の場合、ハローワークでの求職申込後7日間の待期期間に加えて1ヶ月の給付制限期間があります。一方、会社都合退職の場合は7日間の待期期間のみで給付が開始されます。また、給付日数も雇用保険の加入期間や年齢によって異なります。

実際の離職理由がパワハラや過重労働など会社都合に該当する事由である場合は、その事実を正確にハローワークに伝えることができます。ただし、会社都合退職として認められるかどうかは、客観的な証拠に基づいてハローワークが判断します。

心身の不調で辞める人は「特定理由離職者」になる可能性がある

失業保険の離職理由は、「自己都合」と「会社都合」の2つだけではありません。その中間にあたる「特定理由離職者」という区分があります。

心身の不調が原因で退職する場合、この特定理由離職者として認定される可能性があります。自分から退職を申し出た場合でも対象になり得る点が、通常の自己都合退職との大きな違いです。

項目自己都合退職特定理由離職者
給付制限期間1ヶ月
※2025年4月以降
※5年間で3回以上の場合は3ヶ月
なし
受給に必要な被保険者期間離職前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上離職前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上
給付日数90〜150日90〜150日
※自己都合と同じ

特定理由離職者になると、給付制限がなくなり、受給に必要な被保険者期間も緩和されます。ただし、給付日数は自己都合退職と同じです。日数が増えるのは、雇い止めにあった場合に限られます。

※記事末尾の給付日数の表は、会社都合退職と雇い止めによる特定理由離職者の日数です。心身の不調による退職の場合は、自己都合退職の表をご確認ください。

認定に重要なのが医師の診断書です。ハローワークは客観的な資料をもとに判断するため、退職を考えている段階で受診し、取得しておきましょう。

なお、退職届に「一身上の都合」と書いていても、診断書を添えて申し出れば区分が変わることがあります。退職届の文言と失業保険の区分は、別の手続きだからです。

参考:
・基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
・
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

会社都合退職として認められるための証拠の残し方

会社都合退職として認められるかどうかは、ハローワークが客観的な証拠に基づいて判断します。口頭での説明だけでは判断が難しいケースもあるため、事実関係を示す資料があると手続きがスムーズになる場合があります。

  • 業務上のやり取りを示すメールやチャットの記録
  • タイムカードや業務日報のコピー(長時間労働の証明)
  • 医師から発行された診断書
  • 同僚など第三者の証言
  • 日時・場所・内容を記録したメモや日記

これらの資料には、日付や具体的な内容が記録されていることが望ましいとされています。なお、自分が当事者として参加している会話の録音が、ハローワークでの異議申し立てで証拠として使われることもあります。

ただし、録音の方法や公開の仕方によっては問題になる場合があるため、判断に迷う場合は労働基準監督署や弁護士にご相談ください

退職届を提出するタイミングと方法

退職届の提出タイミングは、法律上は退職日の2週間前までとされていますが、実務上は会社の就業規則で「1ヶ月前」や「2ヶ月前」などと定められているケースが多いです。円満退職を目指す場合は、就業規則に従った期間で退職届を提出することが望ましいでしょう。

ただし、精神的に限界を迎えている場合や、やむを得ない事情がある場合は、民法の規定に基づいて2週間前の提出でも法的には有効です。提出方法としては、直属の上司に直接手渡すのが一般的ですが、対面でのやり取りが難しい場合は、内容証明郵便や簡易書留で郵送する方法もあります。

step
就業規則を確認する

会社の就業規則で定められた退職届の提出期限を確認します。1ヶ月前、2ヶ月前などの規定がある場合があります。

step
退職届を作成する

状況に合った退職届を作成し、コピーを自分でも保管しておきます。

step
提出方法を選択する

直属の上司に直接手渡す、郵送する、または退職代行サービスを利用するなど、状況に応じた方法を選択します。

また、退職届のコピーを自分でも保管しておくことで、後日のトラブル防止につながります。精神的苦痛が深刻で会社に行くこと自体が困難な場合は、退職代行サービスの利用も選択肢の一つとなります。

「自分は特定理由離職者に当てはまる?」と気になった方へ

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精神的苦痛で退職する際の円満な伝え方

精神的苦痛を理由に退職する場合でも、できる限り円満に手続きを進めることで、退職後のトラブルを避けることができます。ここでは、上司への伝え方や引き止められにくい退職理由、診断書の扱い方について具体的に説明します。

上司への口頭での伝え方|詳細を話す義務はない

退職を伝える際、上司に詳細な理由を話す法的義務はありません。なぜなら、退職の自由は労働者に保障された権利であり、退職理由の詳細を説明しなければ退職できないということはないからです。

ただし、何も言わずに退職を切り出すのは難しいものです。事実に基づいた範囲で、簡潔に伝えるのが現実的です。

そのまま使える伝え方を、3つのパターンで紹介します。

【体調不良を理由にする場合】

「体調を崩しておりまして、医師からも療養が必要だと言われています。誠に勝手ですが、◯月末で退職させていただきたいと考えています」

【診断書がある場合】

「先日受診したところ、しばらく休養が必要だと診断を受けました。業務を続けることが難しい状況のため、退職させていただきたくご相談に参りました」

【理由を詳しく話したくない場合】

「一身上の都合により、◯月末をもって退職させていただきたいと考えております。詳細については、申し訳ありませんが差し控えさせてください」

大切なのは、退職の意思が固まっていることを毅然とした態度で伝え、「決定事項」として話すことです。「相談」ではなく「報告」の形にすることで、引き止めを受けにくくなります。

引き止められにくい伝え方と、避けたほうがいい伝え方

退職を伝えると、多くの場合は引き止めを受けます。ただし、伝え方によって引き止められにくくなります。

ポイントは、事実のうち「会社が改善できないこと」を選んで伝えることです。

伝え方なぜ引き止められにくいか
体調不良・療養が必要であること会社が改善できる問題ではないため。診断書があるとさらに説得力が増す
詳細は伝えず「一身上の都合」とすること追及する材料がないため。話を長引かせずに済む

逆に、避けたほうがいい伝え方もあります。 

避けたい伝え方理由
給与や人間関係への不満「異動で解決できる」「待遇を見直す」と改善策を提示され、引き止めが長引く
事実と異なる理由(家族の転勤・介護など)会社がその理由で離職票を作成するため、実態と食い違いが生じる。後からパワハラや体調不良を主張しても、認められにくくなる

特に注意したいのが、事実と異なる理由を伝えることです。その場では円満に見えても、離職票の退職理由がそのまま記載されてしまいます。

実際には心身の不調が原因であれば、特定理由離職者として認定される可能性があるにもかかわらず、自らその道を狭めることになりかねません。

伝える内容は簡潔で構いませんが、事実の範囲にとどめておきましょう。

診断書は提出すべきか

精神的不調により医師の診断を受けている場合、診断書を提出するかどうかは状況によって判断が分かれます。診断書を提出するメリットとしては、退職理由の正当性を客観的に示せること、引き止めを受けにくくなること、特定理由離職者として認められる可能性が高まることが挙げられます。

一方で、診断書には病名や症状が記載されるため、プライバシーの観点から慎重に判断する必要もあります。会社の就業規則で診断書の提出が定められている場合は、応じる必要があります。定めがない場合、自発的に提出する義務はありません。

ただし、ハローワークで失業保険の手続きをする際には、診断書が特定理由離職者の判断材料となるため、退職後に備えて診断書を取得しておくことをお勧めします。つまり、会社への提出は任意ですが、ハローワーク用には準備しておくという選択肢があるということです。

「どう伝えれば引き止められずに済む?」と迷った方へ

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※申請手続きはご本人がハローワーク・健康保険組合で行っていただきます。
※支給の可否と金額は、各機関の審査により決定されます。

退職前に確認したい傷病手当金|在職中しか準備できない

心身の不調で退職する場合、退職前に確認しておきたいのが傷病手当金です。病気やケガで働けない状態が続いたときに、健康保険から給与のおよそ3分の2にあたる額が支給されます。重要なのは、退職してからでは間に合わない点です。

ここでは、退職後も受け取るための条件と、見落としやすい注意点を解説します。

傷病手当金を退職後も受け取る3つの条件 

まず、傷病手当金の基本的な内容を確認しておきましょう。

項目内容
支給額支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2にした額(1日あたり)
支給期間支給開始日から通算して最長1年6ヶ月
申請窓口加入している健康保険組合・協会けんぽ
主な条件業務外の病気やケガの療養のため、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けないこと

在職中に受給を開始していれば、退職後も引き続き受け取れる場合があります。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。

ただし、次の3つの条件をすべて満たしている必要があります。

条件内容
①健康保険の加入期間退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
②退職時点で受給中退職日までに傷病手当金の受給を開始している、または受給できる状態にあること
③退職日に出勤していない退職日に出勤すると「働ける状態」とみなされ、継続給付が受けられなくなる

①は、転職して間もない方が引っかかりやすい条件です。前職と合わせて1年以上あればよいわけではなく、退職日までの加入が途切れずに1年以上続いている必要があります。

②については、退職日までに申請が完了している必要はありません。退職日の時点で働けない状態にあり、受給の要件を満たしていれば対象になります。ただし、医師の意見書が必要になるため、在職中の受診が前提です。

③は、次で詳しく説明します。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

退職日に出勤すると継続給付が受けられなくなる 

3つの条件のうち、最も見落としやすいのが「退職日に出勤しないこと」です。

退職日に出勤すると、その時点で「働ける状態にある」と判断され、退職後の継続給付を受けられなくなります。1日の違いで、最長1年6ヶ月分の支給を失うことになりかねません。

特に注意したいのが、次のようなケースです。

  • 最終出社日と退職日が同じ日になっている
  • 退職日に挨拶や私物の整理のために出社した
  • 退職日に半日だけ引き継ぎのために出社した

いずれも出勤とみなされる可能性があります。退職日は欠勤または有給休暇の消化にあたる日にしておきましょう。

有給休暇が残っている場合、退職日の直前に消化するのが一般的です。この場合、有給休暇は賃金が支払われる日として扱われるため、傷病手当金との関係は健康保険組合に確認しておくと確実です。

退職日をいつにするかは、退職届を書く段階で決まります。すでに休職している方や、これから休職を検討している方は、退職日の設定を人事担当者とすり合わせておきましょう。

「自分は傷病手当金の対象になる?」と気になった方へ

退職リトリートでは、社会保険労務士の監修のもと、退職前後の手続きと受け取れる可能性のある給付金についてご案内します。退職前1ヶ月頃からのご相談が効果的です。

※申請手続きはご本人がハローワーク・健康保険組合で行っていただきます。
※支給の可否と金額は、各機関の審査により決定されます。

退職後の手続きと失業保険の受給について

退職後には、失業保険の手続きをはじめとするさまざまな手続きが必要です。特に、離職票の退職理由が実態と異なる場合の対処法や、2025年4月から変更された失業保険の制度について理解しておくことが重要です。ここでは、退職後の手続きについて詳しく解説します。

離職票の退職理由が「自己都合」になっていた場合の対処法

退職後、会社から発行される離職票の退職理由が「自己都合」となっていても、実際にはパワハラや過重労働などが原因だった場合、ハローワークで異議申し立てを行うことができます。

異議申し立ての手続きは、離職票の「離職理由」欄に記載されている内容に対して「異議あり」にチェックを入れ、具体的な理由と証拠を添えてハローワークに提出します。ハローワークは、あなたの主張と会社側の主張、提出された証拠を総合的に判断して、最終的な離職理由を決定します。

この際、事前に準備しておいたメールの記録や診断書などの証拠が重要な判断材料となります。心身の不調が原因で退職した場合は、診断書があれば特定理由離職者として認定される可能性もあります。

つまり、離職票の内容が実態と異なる場合でも、適切な手続きを経れば訂正できる可能性があるということです。

2025年4月から変わった失業保険の給付制限期間

2025年4月1日以降に離職した方については、自己都合退職の場合の給付制限期間が2025年3月までの原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。これは、早期の再就職支援と生活支援を強化するための制度改正です。

ただし、退職日から遡って5年間のうちに3回以上、正当な理由のない自己都合退職をして受給資格決定を受けた場合は、給付制限期間は3ヶ月となります。また、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇)の場合も、給付制限は3ヶ月です。

なお、2020年10月の雇用保険法改正以前は、自己都合退職の給付制限期間は3ヶ月でしたが、2020年10月以降は原則2ヶ月に短縮され、今回の改正でさらに1ヶ月に短縮されました。

また、2025年4月からは、離職日前1年以内または離職後に厚生労働省の定める教育訓練を受けた場合、給付制限が解除される仕組みが新設されました。この場合、待期期間の7日間が終われば給付が始まります。利用するには、受給資格決定日または初回認定日までにハローワークへ申し出る必要があります。

参考:雇用保険制度|厚生労働省

失業保険の給付開始までの流れ(例)

例えば、2025年4月1日に自己都合で退職し、4月8日に求職申込を行った場合、4月8日から7日間(4月14日まで)が待期期間、その後1ヶ月間(5月14日まで)が給付制限期間となり、5月15日から失業保険の支給が始まるという流れです。

この制度改正により、自己都合退職者も以前より早く給付を受けられるようになりましたが、それでも会社都合退職と比べると受給開始時期は遅くなる点には注意が必要です。

失業保険 総額シミュレーター
4つの質問に答えるだけで、
受給総額の目安がわかります。
質問 1 / 4
退職理由はどれですか?
退職時の年齢は?
雇用保険に加入していた期間は?
退職前の年収(額面)は?
350万円
100万円650万円以上
※税金などが引かれる前の金額です。スライダーか「−10万/+10万」で調整してください。

※本記事内の各種受給例はあくまでも一例であり、実際は個人の状況により異なる可能性がございます。正確な金額はハローワークでご確認ください。

「自分はいくら受け取れる?」と気になった方へ

退職リトリートでは、社会保険労務士の監修のもと、受け取れる可能性のある給付金と手続きの流れをご案内します。

※金額は制度上の目安です。支給の可否と金額は、ハローワーク等の審査により決定されます。
※申請手続きはご本人が行っていただきます。

ハローワークでの異議申し立て手続き

ハローワークでの異議申し立て手続きは、離職票を受け取った後、速やかに行うことが重要です。手続きの流れとしては、まず離職票の「離職理由」欄を確認し、実態と異なる場合は「異議あり」にチェックを入れます。

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離職票の確認

離職票の「離職理由」欄を確認し、実態と異なる場合は「異議あり」にチェックを入れます。

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証拠の準備

具体的な離職理由を説明する書面と、それを裏付ける証拠(メール、診断書、タイムカード、録音記録など)を準備します。

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ハローワークへの提出

これらの資料をハローワークの窓口に提出すると、ハローワーク所長等が会社側にも事実関係を確認し、総合的に判断して離職理由を決定します。

この手続きには一定の時間がかかる場合もありますが、正当な理由があれば会社都合退職として認められ、失業保険の給付条件が改善される可能性があります。つまり、離職票の内容に納得がいかない場合は、諦めずにハローワークに相談することが大切だということです。

精神的苦痛での退職届の書き方についてよくある質問

精神的苦痛を理由に退職を検討する際、多くの方が共通して抱える疑問や不安があります。ここでは、よくある質問とその回答を分かりやすく解説します。

メンタル不調を理由に即日退職することは可能ですか?

メンタル不調を理由とした即日退職は、条件次第で可能です。

契約期間の定めがある方(契約社員・パートなど)は、民法第628条により「やむを得ない事由」があれば、期間の途中でも直ちに契約を解除できます。精神的な不調が深刻で、医師から就業が困難と診断されている場合は、この事由に該当する可能性があります。

契約期間の定めがない方(正社員など)は、民法第627条により申し入れから2週間で契約が終了しますが、会社が同意すればそれより早く退職できます。

いずれの場合も、医師の診断書など客観的な証拠が必要です。会社に直接伝えることが難しい場合は、内容証明郵便で退職届を送付する、退職代行サービスを利用するといった方法もあります。

退職届に病名を書く必要はありますか?

退職届に病名を書く必要はありません。なぜなら、病名などの個人の健康情報はプライバシーに関わる情報であり、会社に開示する義務はないからです。

退職届には「医師の診断により療養が必要なため」「健康上の理由により」といった表現で十分であり、具体的な病名を記載する必要はありません。会社から病名の開示を求められた場合でも、応じるかどうかはあなたの判断次第です。ただし、ハローワークで失業保険の手続きをする際には、診断書の提出が求められる場合があり、その場合は病名が記載された診断書を提示することになります。

つまり、退職届には病名を書かず、必要な場面でのみ診断書を使用するという方法が、プライバシーを保護しながら適切に手続きを進める方法と言えます。

パワハラが理由でも「一身上の都合」と書いてしまった場合はどうなりますか?

退職届に「一身上の都合」と記載してしまった場合でも、実際にはパワハラが原因であれば、ハローワークでの異議申し立てにより会社都合退職として認められる可能性があります。

離職票を受け取った際、退職理由が「自己都合」となっていても諦める必要はありません。ハローワークの窓口で、実際の退職理由がパワハラであることを説明し、証拠となる資料(メール、録音、診断書など)を提出すれば、ハローワークが事実関係を調査して最終判断を下します。

ただし、この手続きをスムーズに進めるためには、パワハラの事実を裏付ける客観的な証拠が重要です。また、心身の不調が原因で退職した場合は、診断書があれば特定理由離職者として認定される可能性もあります。

つまり、退職届の書き方が自己都合であっても、適切な証拠と手続きにより、区分が変わる道は残されているということです。

会社が退職届の受理を拒否した場合はどうすればいいですか?

会社が退職届の受理を拒否した場合でも、法的には退職の効力に影響はありません。なぜなら、民法第627条により、期間の定めのない労働契約の場合、退職の申し入れから2週間が経過すれば退職が成立するとされているからです。

会社が退職届を受け取らない場合の対処法としては、内容証明郵便で退職届を送付する方法があります。内容証明郵便であれば、「いつ・どのような内容の文書を送ったか」が郵便局の記録として残るため、後日のトラブル防止に有効です。また、退職届のコピーを自分でも保管しておくことで、退職の意思表示をした証拠として使用できます。

つまり、会社が受理を拒否しても、適切な方法で退職の意思表示を行えば、法的には退職が成立するということです。会社との退職手続きが困難な場合は、労働基準監督署や弁護士にご相談ください。退職代行サービスを利用する場合は、弁護士が運営するサービスを選択することをお勧めします。

退職理由が精神的に限界の場合、どう書けばいいですか? 

「精神的に限界」という表現をそのまま退職届に書く必要はありません。「一身上の都合により」または「体調不良により療養が必要なため」で十分です。

退職届は退職の意思を伝える書類であり、感情や経緯を説明する場ではありません。「限界」「耐えられない」といった表現は、会社側との認識のずれを生み、やり取りが長引く原因になります。心身の負担が大きい状況では、手続きを早く終わらせることを優先しましょう。

事情を伝えたい場合は、退職届ではなく口頭で補足するか、診断書を示す形で足ります。

なお、医師の診断を受けているなら、退職前に診断書を取得しておくことをおすすめします。退職届に書くよりも確実に伝わるうえ、退職後の失業保険や傷病手当金の手続きでも必要になる場合があるためです。

転職活動で退職理由を聞かれたらどう答えればいいですか?

転職活動で退職理由を聞かれた際、精神的苦痛や職場環境の問題をそのまま伝えることは避け、ポジティブな表現に言い換えることが推奨されます。なぜなら、採用担当者はネガティブな退職理由を聞くと、「同じ理由で辞めるのではないか」という懸念を抱く可能性があるからです。

  • 「新しい環境でスキルを活かしたいと考えました」
  • 「キャリアアップを目指して転職を決意しました」
  • 「より自分に合った働き方を模索したいと思いました」
  • 「業務内容や働き方について改めて考える機会があり、自分の適性を活かせる環境を求めるようになりました」

パワハラや過重労働が原因であっても、上記のような前向きな理由に変換して伝えることが効果的です。面接では、過去の不満を語るのではなく、将来への意欲を伝えることが重要です。

退職の手続きや交渉が不安な方へ|退職リトリートのご案内

精神的苦痛での退職届の書き方と、退職前後の手続きについて解説してきました。

退職届そのものは、簡潔に書けば問題ありません。一方で、退職日の設定や診断書の準備など、退職前にしか間に合わないことがいくつかあります。

まずはハローワークや健康保険組合の窓口で相談するのが基本ですが、「何から手をつければいいか分からない」という段階で立ち止まってしまう方も少なくありません。

退職リトリートでは、社会保険労務士の監修のもと、受け取れる可能性のある給付金制度と申請の流れをご案内しています。退職前1ヶ月頃からのご相談が効果的ですので、退職を検討されている方は、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

※申請手続きはご本人がハローワーク・健康保険組合で行っていただきます。
※支給の可否と金額は、各機関の審査により決定されます。
※サービスの料金については、料金ページをご確認ください。

失業保険 総額シミュレーター
4つの質問に答えるだけで、
受給総額の目安がわかります。
質問 1 / 4
退職理由はどれですか?
退職時の年齢は?
雇用保険に加入していた期間は?
退職前の年収(額面)は?
350万円
100万円650万円以上
※税金などが引かれる前の金額です。スライダーか「−10万/+10万」で調整してください。

※本記事内の各種受給例はあくまでも一例であり、実際は個人の状況により異なる可能性がございます。正確な金額はハローワークでご確認ください。

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この記事を書いた人

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